メンター通信 第85号
発行日2011.2
今なぜランチェスター戦略なのか!
私は、ランチェスター戦略を伝える仕事をしています。
なぜ戦略を伝える仕事をしようと思ったかですが、それは私の経営者としての悩みが発端です。
以前お世話になっていたソフト開発会社では経営者陣の一員として働かせて頂いておりました。
社長が人徳のある方で、私を全面的に信頼して頂き現場の指揮を任されていました。
任されるということは、それだけ責任も重い訳です。日付が2000年を越えるとコンピューターが最悪動かなくなるという大問題が起こりました。
この大問題のお陰で2000年を過ぎる当たりまで、仕事は業界に満たされており、積極的に仕事を求めなくてもなんとなく入ってくるものでした。
仕事が入ってくることが保障されていると利益を上げるには生産性を上げればいい訳ですので、既に目に見えているものの改善を中心に考えればよかったのです。
ところが、この2000年問題が終わりますと様子がおかしくなっています。2000年問題を機にシステムの再構築が行なわれたため、新たにコンピューターシステムを開発するという会社が激減したのです。
こうなってくると生産性の向上を図っても利益の確保が難しくなっています。
そんなときに悩んでいたことのひとつが、はどのぐらい粗利益を上げれば適性なんだろうかという疑問です。
当時その会社ではSE(システムエンジニア)が1ヶ月作業すると50万〜55万円でした。これは下請けの価格です。1ヶ月60万円を超えるというのは稀なことであり、プログラマーはもっと低い価格です。
しかも毎年この価格が上がるかと言うと下げられる傾向にありました。
社員の年齢は上がり固定費は上がるが、契約金額は下げられるという状態です。
そうすると先ほどのどれだけ利益を削ってもよいのかということを知りたくなるわけです。
そこで、私は名古屋の大手コンサルタント会社のセミナーに参加しました。
セミナー終了後、私は講師のところへ行き
「私の会社はソフトウェアの開発をやっています、いったいいくら粗利益を上げなければならないんでしょうか?」こんな質問をしました。
ところが講師からは、「上げたい利益はいくらですか?」という質問が反対に戻ってきました。
「固定費は、解りますがそれにいくらの利益を乗せればよいのか解らないのです」
「それは、企業の状態によって違いますので・・・・」
とあいまいな答えで、私の疑問をはぐらかされてしまいました。
それでも、なんとなくですが下請けをしていたら儲からないだろうな。元請を地元でする方がよいのではないかと考えたのです。
そこで地元企業さんへのソフト開発を進めようと考えたわけです。当時までITというのが持てはやされていた時代でしたので、セミナーを積極的に開催しました。
運よくマイクロソフトというバックアップも得られ、さらに人前で話が出来るというスタッフにも恵まれて、セミナーは順調に開催できました。
ところが利益は、以前とあまり変わりませんでした。確かに1つの仕事の利益率は高いのですが、お客さんを見つけるのに時間とお金が掛かります。しかも1つの仕事の期間が短く不安定でした。
これなら以前主流だったシステムエンジニアやプログラマーを派遣するという仕事の方が利益は薄いが安定していていいんじゃぁないかそんな風に思い始めました。
結局どうすれば利益が上がるのかという疑問はぬぐえなかったのです。
その疑問を抱えながら「どうすれば新しいお客さんを獲得できるか」を勉強しました。
それも部下が動いてです。
それまでの取引先はすべて過去の遺産です。紹介にしろ、たまたま出会ったにしろ、仕組みになっていなかったのです。
そこで3つ目の悩みです。
どういう考え方で、営業の仕組みづくりをして良いのか解りません。
というより当時は仕組みづくりなんていう考えはなくて、自分もシステム開発の仕事をしていかなければならないのに。1件1件お客さんのところを訪問して、開拓していくなんてできない。
それをシステム開発の経験がないものできっかけ作りをしてきてくれないかなぁという程度です。
まとめますと以下の3つです。
1.いくら儲けたら適正なのか
2.どうなれば儲かるのか
3.どういう考え方で営業展開をしていったらいいのか
こんなことも知らずに経営?とは情けない
「いくら儲けたら適正なのか」
ランチェスター戦略の勉強を始めて直ぐこの疑問が解かれると同時に、こんなことも知らずに経営陣に入っていたかと思うと怖くなってきました。
経営は社長が好き嫌いに関わらず同業他社と競争関係にあります。
私はそんなこと考えたこともありませんでした。
「どこにそんな競争する相手がいるんだ」
そう目の前に現れるのは競合相手であり、競争相手ではないんです。
お客さんは、自分にとってよりいいものを求めて比較をします。
それは我々の知らないところでやるんです。これは自分が物を買うときのことを想像すれば直ぐ解ることです。
これが競争です。競争させられているんです。
お客さんも、競争させようと思っているわけではないのです。
それでいくら儲ければ適正かということですが、ランチェスターの法則を応用すると純利益が競争相手の1.3倍あれば勝ち組に入ったことになります。
純利益なので、減価償却など税務処理によって上下するので比較にならないと思われるかもしれませんが、純利益が高いところの会社も賞与や決算のときに備品を買ったり償却をするはずです。
それでもしっかりと税金を納めて残すわけですから、相対的には変わらないと思うのですが皆さんはどのようにお考えでしょうか。こういう指標で最もよいのがTKCから出ている業界平均の指標です。業界すなわち競争相手との比較です。
念のために3年ぐらいを平均するとよいと思います。
どうなれば儲かるのか
私は利益というのは売上から経費引いた残りですが、上場企業一人当たりを比べると余りに差がありすぎます。3倍なんて序の口で、何十倍という差が付いているのです。
これには驚きました。他の会社ってどれだけ儲かっているんだろう。どう考えても高い値で売って、経費を抑えるだけでは説明がつきません。
その後ランチェスター戦略を勉強して解った結論ですが、
『儲かる状態というのは、筋のいいお客さんが、営業しなくても向こうから尋ねてきてくれるような状態です』
こういう状態を、競争相手より如何に早く作れるかです。
筋のいいお客さんというのは、お金を一番払ってくれる人ですから、よりエンドユーザーに近い方が有利です。そこに至るまで何度も競争が起こって価格がドンドン落ちていくわけです。
次に営業しなくても、お客さんが買いに来てくれるようになるには、数ある競争相手の中から選んでもらう必要があります。さらにお客さんがわざわざこちらまで足を運んでもらう理由がなければ、ならないのです。
紹介となると、さらにハードルが高くなって、お客さんがそのお知り合いに
「なぜあなたに紹介するかというと、XXXXXの理由で一度騙されたと思って使ってみてください。」とまで言わせることは必要です。
そうなったときに、圧倒的な利益が上がるんですね。
そんな訳で、ちょっと安く仕入れてきて、販売をしたぐらいではとても高い利益は生むことが出来ないということを知りました。
どういう考え方で運営したらよいのか
これが弱者の戦略というヤツです。
例えばあれもこれもやらずに、一つ一つ片付けていく。
それも全員で一つに集中していくことです。
弱い立場なら、当たり前の話ですが全員が団結して一点に集中して行かないと厚い壁は破れません。
いまさらながらですが、当たり前のことです。
それが実際の経営となるとどうも目先のお金に振り回されて、あれこれやってしまうんです。
そして中途半場に終わってしまう。一時的に業績は上がるかもしれませんが、業績が上がる磐石な体制を作るまでには至らないのです。
子供が闇雲に手を回して掛かってくるようもので、最後は疲れてやめてしまうことになります。
空手の有段者のように一点に力を集中することが弱者の戦略の第一歩です。
もう一つ心得ておいていいことがあります。
それはお客さんに一歩近づく接近戦です。
例えて言うなれば、キムタクは黙って立っていても女性が興味を持って近づいて来てくれます。
ところが普通の人は自分から一歩近づいていかないと興味を持ってもらえません。
それもイキナリ近づいていくと拒否されてしまいます。
「てんびんの詩」に出てくるような商人のように始めないと競争条件が不利な会社は、本当に強い会社にはなれないということです。
なんと言っても、弱者の戦略の目的は強者になることですからそれで私は思いついたのです。
こういうこと(私の持った疑問)って、知らない人いるんじゃぁないかなぁと思ったわけです。
「自社に合った目標を決めて、全員が力を合わせ毎日仕事をする。
そして市場(世の中)から認められ会社の存在意義を得る」
こんな会社が1社2社と増えていったら、地域経済がとんでもなく発展するんではないかと思います。
そんな思いでこの仕事を続けています。
まだご都合が付かず戦略社長塾を受けられていない方は、是非ともご参加ください。
経営戦略の本質が解ります。
中小企業家同友会でランチェスター研究会
先ほどの文章に力が入ってしまったので、紙面がえらい少なくなってしまいました。
有難い話です。今期中小企業家同友会という経済団体で現在ランチェスター戦略事例研究グループというのをやってもらっています。
経営者の方の話を聞くのが中心ですが、弱者の戦略ルールに基づいている会社の方を選んでお話をお聞きしています。
ただ、ランチェスター戦略を研究して、それを自社に置き換えているのではなく既にやっていることが弱者の戦略になっている方がほとんどです。昨年6月からスタートして5月まで月に1度行っています。
今まで報告してい頂いた方は、サノプランニングの佐野社長、SPA岩本社長、ギルドデザイン山口社長、バルトロジャパンの山田社長、西本副社長、まっさん増原社長、そして1月は誠文社 西村社長でした。
2月は私の学校の先輩でもありますマイクロキャビンの大矢知社主にお話を頂きます。
3月は箱にこだわったパックスアライブ大谷社長、4月は、ツーバイフォームの電気工事に特化されている和田電気の和田社長、そして5月は錦見鋳造のマーケティングを引っ張ってきた錦見社長の奥様に報告頂きます。
特徴のある経営をされている方々ばかりの報告ですので、とても面白い話が聞けます。
経営者の方を囲んで生の話を聞けるのはこの会の特徴です。会員外でも参加可能ですのでご興味のある方はご連絡ください。日程をお知らせします。この様子はブログでも紹介しております。
「三重同友会 ランチェスター」で検索ください。
「小さい会社の社長の戦略:三重同友会」と表示されます
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