メンター通信 第15号
発行日2005.3.25
新潟からの余熱
今回は前号の続編から始めたいと思います。
新潟の木野口氏の講演がどうしても気になった私は、多くの方の手を煩わせながら、ついに講演のテープを手に入れることに成功をしました。
何度も聞いているうちに自分のもやもやしていた部分を明確できることができました。
そういう訳で、続報を伝えたいと思います。
勉強が先でも成功するがな
木野口社長は、最初は役場の職員でした。その後北海道同友会の事務局員として6ヶ月間勤務されます。
この6ヶ月間に700名もの経営者と出会い、同友会の理念を学ぶことになります。
その後、共同印刷に経営者として入社するわけですが、独立起業したわけでもないし、事業を継承したわけでもありません。経営の経験もなく経営者として赴任するわけですから、非常に特殊なケースだと思います。
つまり実践よりも先に考え方や理屈を学び経営をされているのです。
ランチェスター経営の竹田先生がおっしゃっていた「教材を販売しようとする前に社長の悩みを一人でも多く聞いて、考えていることを理解することから始めなさい」このことと一致します。
次に、戦略をしっかり研究し原理原則を理解し、大事なところから順に戦略を立てなさいと教えていただきました。
木野口社長の経営への取り組みは、まさにこのことを証明しているのではないかと、自信が付いた瞬間でした。
経営者は、良き指揮官であること
共同印刷に入ってすぐ労働組合の折衝があり、前経営者が約束したことを守ろうとするのですが、それ以上に社員が望んでいることは人並みの給与が欲しいということでした。
そうでなければ20人中半数の社員は辞めると言い出したのです。
当時の共同印刷の給与を世間並みにするということは、2倍に上げるということです。
経営者にとって社員の給与を2倍にするということがどれ程大変なことかはお分かりでしょう。
そのときに、「給与を2倍に上げるには最低売上を今の2倍にしなければならんぞ」
といったら、社員は「やる。その代わり、常務(木野口氏)は経営のプロなんだから2倍にする方法を貴方が指示をしてくれ、そうしたらどんなことでもやる」と約束をしたのです。
結果的に給与を倍にし、人件費は70数%アップ。
売上は80数%アップしたのです。
この社員さんの決断もさることながら、2倍に上げる方法を指示できる戦略能力の高さは素晴らしいものがあります。
木野口社長が、経営を始めて初年度のことです。
社長は指揮官であり、その組織の勝ち方を明確にし、社員はその意図を理解し、一丸となって達成を目指す。
ここで間違えてはいけないのは、社長の戦略が先にあるということです。
どうすれば、売上を倍にできるかを知ってないとできないことです。
既にこの時点で、社員の役割と社長の役割が明確になっていることに関心をしました。
木野口社長は、こうして危機を乗り切るのですが、中小企業における労使関係の見解から次のことを学び経営に取り入れていくのです。
経営者は実践者であること
まず一つ目は、「経営者としての経営姿勢」です。
経営者である以上どんなに経営環境が厳しくとも時代の変化に対応し経営を維持し、発展させる責任がある。
そのためには、経営者自身が経営の本質を勉強し維持・発展の方法を学ばなければなりません。
話は変りますが、私が同友会に入った理由は、勉強の場を求めてです。同友会に入る前には名古屋の経営コンサルタントの話をよく聴きに行きました。相談もしました。ところがなんか違う。
それで他の社長はどうなんだろうと思い、中小企業の社長の集まる同友会に入会をさせて頂いたのです。
二つ目は、「経営指針の成文化とその実践」です。
実は、なぜ成文化が必要なのかは、その後聴いた香取氏の講演の中で私は気づくことになります。(次の記事をお読みください)
三つ目が「社員をもっとも信頼できるパートナーと考え、共に育ちあう教育を」です。
この三つ目は、同友会では良く取り上げられる話題ですが具体的にどのように進めているのかを木野口氏は語ってくれました。
皮肉なことにこれも、私は後から気づかされることになりました。
木野口氏は、「社会に出る」ということ、「働く」という意味を理解させることから始めるのです。
会社のためではなく、貴方のために・・という教え方をされるそうです。
お金が欲しいから、単に会社に就職したというのでは困る。
このことは、社員にとっても重要ですが、会社にとっても非常に重要です。
私が感銘を受けたのは後に書くディズニーランドにしろ、木野口氏にしろ、学んだことをどうやって実践するかという仕組みを作っているということです。
やっぱり戦略実力は高かった
三一年経営を進めてきて大切にしてきたことを話してくれました。
一つは、パブリックリレーション、お客様との関係作りです。
マンスリーアイワードを毎月発刊しているそうです。この冊子には一切宣伝を載せていない。そして主要取引先には営業マンがこれを届けるそうです。
つまり、訪問回数を増やすことと、関係作りをするシステムが出来ているということです。
もう一つは、非価格競争力です。
ここでも、木野口氏の戦略能力の高さを垣間見ました。
非価格競争力と言えば、直ぐに性能の良いものとか、他社に無い技術とか想像してしまいますが、木野口氏の口から最初に出たのは、掃除とか、挨拶とかでした。
お客様と接する部分で差別化すればそれは競争力になると考えてみえるようです。
双方とも、ランチェスター弱者の戦略に照らし合わせて正しい戦略の選択であると思います。
その他、「ファン作りをする経営」にしても、「顧客対応の見直し」にしても、弱者の戦略概念とは矛盾していません。
改めて戦略実力の高さに感心をした次第です。
なんとか三重県の経営者に聴かせられないものか?
私の使命は、社長の脳を活性化して、税金を一杯納めさせることです。そう考えると、是非とも三重県の経営者に聴かせられないものか。音声テープではなく、生の声を聞く機会を作るべきではないか。
私は新潟から帰りの電車でそう考えました。
結局自分の力だけでは無理だと判断した私は、木野口さんの講演を勧めてくれたアサプリ松岡社長を頼ったのでした。
三月一四日のことです。松岡社長は、忙しい中九〇分も時間を裂いて経営のことを語ってくれました。
そして、木野口社長を三重にお呼びすることに大賛成をして頂いたのです。
まだ木野口社長とは一度も話したこともないのにこんなことを書いて笑われるかもしれませんが、来てもらうからには効果的にしたい。
三重県の経営者に、熱い火をつけたい。
そう考えています。
それまでに、もっと同友会のことを勉強し、理解した上の方がよいのではないかと思います。そして広めるのも私の仕事だと考えています。まずは、この特集記事を組み宣言することからスタートしました。木野口教在家信者の松岡社長に後押ししてもらって、実現できることを祈っていてください。
この場をお借りして、講演テープを入手するに当りご尽力頂いた方々にお礼申し上げます。
ディズニーランドの熱い90分
忙しい二月が終わり三月のスケジュールを立てねばと手帳を覗くとあれ?確か聞きたいと思っていたセミナーがあったよなぁ。
午後から予定もポッカリと空いてしまっているし。
再度案内を確認すると
「わぁ〜、明日じゃん。えーと締め切りは、先月の二二日。
でもなぁ。一回は聞いておきたいよなぁ。」
駄目もとで、四日市商工会議所に電話を入れることに
「実は、もう定員オーバーで、でも当日来られない方がみえると思いますので、受付だけさせて頂きます。」
「やったぁ〜」
翌二日に、会場へ一番乗り。暫くすると商店街の理事長増原氏が隣に、着席。さすが勉強熱心だこと。
60名ぐらいはみえたでしょうか。
演題は、ディズニーランドの体験談から学ぶ感動サービス「本当の仕事、本当のサービスとは」だった。講演者は香取貴信氏。
「社会人として大切なことは、みんなディズニーランドで教わった」の著者です。
ディズニーランドは、ほとんどがアルバイトで構成されています。
香取氏もアルバイトで採用された一人です。
当時まだディズニーランドは出来たばかりで、どうせ他の遊園地と同様に廃れていくだろうと言われていました。
彼も、当時付き合っていた彼女がファンだったという理由だけで応募をしてきたのです。
香取氏は、自分のことをヤンキーですとおっしゃっていました。
そのヤンキーが長く勤めることができた要因のひとつが、公平なジャッジだそうです。
ルールは成文化してこそルール
アルバイトは、採用面接でルールが守れるかの確認をします。
例えば、髪の毛は耳に掛かってはいけないとか、茶髪はだめとか、無断欠勤はいけないとか。当たり前のことを確認するわけです。
そのことが守れると採用になるわけです。
香取氏も同じように確認され、入りたいという一心でその場しのぎでOKするわけです。
ところが、実際に入ってみると
朝礼で髪の毛が長いのが目につくと朝礼後に呼び出され
「香取君、解っていると思うけれど、ルールを言ってみて」
「髪の毛は・・・」と始めるわけです。
髪の毛は耳に掛かってはいけないね。
「それは、掛かっているね。」
「で、どうする?」
「で、って」
「二つに一つ、
「一つは今から欠勤扱いで、直ぐに帰る」
「もう一つは、今すぐ髪の毛を切る。」
「さてどうする。」
欠勤扱いというのは、通勤手当も出ないし、皆勤手当てもなくなるということです。
香取氏は、このルールは変らないということを思い知らされたそうです。そしてこのルールは社長であっても、会長であっても変らない、この公平さが救いであったと言っています。
私のような世代ですと、社長は社長だから、と別扱いであることを理解できる世代です。
しかし、それができない世代にとっては非常に画期的であるということです。
私はこのことを聞いて、木野口氏の講演の「経営指針の成文化とその実践」を思い出しました。
仮に社長が頭の中で解っていると言って、その都度ルールを変え俺がルールブックだ。などと言っていたら方針がその都度変るわけです。
社長とて人間です。それることもあります。ですからルールを成文化し、繰り返し自分自身も確認しながら経営を進めるべきです。
自分の外に「真」を見出すのは、西洋の文化でもありますが(神の名においてというやつです)平等ということを明確にするにはこのやり方の方が合理的ではないかと思います。
もう一つ成文化する理由があります。
経営には特に中小企業の経営では、社長個人の都合と経営の原則・組織体の原則があります。
原則を優先すれば社長は、最初は気分が悪いが業績は良くなり後で気分はよくなります。しかし個人の都合を優先すれば、気分はよくなるが業績は悪くなります。
原則を守るのならばルールに則って運営しやすくするために、成文化するべきだと思います。
教育と訓練は合わせて一本
アルバイトを使って接客させるためには、まず挨拶など基本的な社会人としての心構えから教えなければなりません。
なぜ挨拶をしなければならないかを教え、それができるようになるまで繰り返し訓練をするのです。
今まで私は社員に対してこんな考え方をしたことがありません。
それには理由があります。というより言い訳があります。
給与を貰っているんだから、やって当然。
もう大人なんだから、自分で責任を取ればよい。
そう言い訳しながら、実のところ教育・訓練を怠っていたのです。
特に訓練をしませんでした。
ディズニーランドでは、教え方も工夫しています。
例えば、掃除をなぜするかということを教える場合。
「自分のところに大事な彼女が来るとしたら、掃除をするだろ。それと同じだ。当たり前のことだ。」などと教えます。
ディズニーランドのポリシーは「すべてはお客様のために」だから一番大切なお客様を迎え入れるのに掃除をするのは当たり前だと頭ごなしには教えないんです。
「おばあちゃんが、倒れて困っていたら君達はどうするんだ。
声をかけるだろう。それと同じ困っていそうな人がいたら、呼ばれなくても声を掛けるのは当然だ。」
とか教え方も、ただ掃除をしなさいというのではなく、例を挙げて納得させて教育し、そして訓練するのです。
ディズニーランドが感動を与えるのはこういった当たり前のことを馬鹿みたいに徹底してやったことの結果だと講演の中で触れていました。
この辺りは木野口社長の講演と遇いいれるところがあります。
感動のサービスは、お客様のことを考えること
感動のサービスは、この当たり前のことができるようになってからでないと出来ないのですが、どうやってやるかを紹介してもらいました。
ディズニーランドには、パレードというものがあります、このパレードもディズニーの人気商品の一つです。
お客様は、非常に焦っているので、こんな質問があるそうです。
「3時からのパレードって、何時から?」
「・・・」
これを、3時からですよ。なんて答えたら最悪です。
お客様は、3時からスタートするパレードは何時にここを通るのかということを知りたいわけです。
お客様の本当に知りことに、まず答えることです。
ここまでは当たり前のサービスです。
ここからが感動させるサービスです。まず観察するそうです。
もし、くまのプーさんのぬいぐるみを持っていたら、プーさんはお好きですか?と質問するそうです。
お客さんが気づいていないサービスを提供するためにはお客さんを観察し、質問しお客様の心の中を知るわけです。
「実は、この場所はプーさんとは反対側になるんです。もし良かったら、近くで見える場所を特別にお教え致しますが、ご一緒しますか?
このときのために彼らは商品の研究をし、知識を得、技術を磨くわけです。
すべてはお客様のために。
こんな記事も読んだことがあります。
乗り物の外にバッグを落として、閉園後の回収作業をお待ちのカップルのお客様がいました。
長くお待たせしていたので
「写真を撮りましょうか?今、パーク内はお二人だけですよ」
とお声をおかけしたそうです。
このカップルは一生思い出に残るのではないでしょうか。
ディズニーランドでは、どうやらこのように感動させたことを発表するようです。
皆さんの会社では如何ですか。
お客様に喜んでもらうにはどうすればよいか。などという会議をしたことがありますか。
普通は、仕事の進捗とか、売上の状況とかの報告が多いと思います。
ドラッガー先生も著書の中で書かれているように、事業の目的は顧客創造にあるということを忠実に実践した結果ではないでしょうか。
お客様に好かれて、気に入られて、忘れられないように努めれば必ず業績はよくなると思いませんか?
感動のお裾分け
今回ご紹介させて頂いた2つの講演の感動をこの文章だけではとても伝え切れません。
実は、2つの講演とも自分の学習のために音楽CDで聴けるようにしました。
そのお裾分けをしたいと思います。
無料としますと、遠慮されると思いますので、送料+CD+手間賃で、一セット(二枚組み)五百円〜千円程度で支給できると思います。申込は、別紙申込用紙にて承ります。
出逢いイベント予報(あくまで予報です確認願います)
・養心の会 三重
「中村 文昭氏講演会」
四月五日(火)一九時〜 会場:松阪市市民活動センター
問合せ:潟激Kート(0598-23-5590)中居さん
・三重県中小企業家同友会伊勢鳥羽支部四月例会。
「一位作りの経営戦略」 岩崎 功
四月七日(木)一九時〜 会場:伊勢トピア
問合せ:三重県中小企業家同友会(0593-51-3310)
・三重県中小企業家同友会 県総会。
「全ての会員が自分の経営を語る機会を持とう」
四月二六日(火)一四時〜 会場:桑名シティホテル
問合せ:三重県中小企業家同友会(0593-51-3310)
竹田陽一氏ふたたび
突然決まりました。「小さな会社儲けのルール」の著者竹田陽一氏のセミナーが四日市であります。前回九六名でしたので混雑が予想されますので、申込はお早めに!
演題は、「固定客作りの経営戦略」顧客対応で地元bPを目指して業績をアップしましょう。
・竹田陽一講演会 「固定客作りの経営戦略」
六月一八日(土)一四時〜 会場:じばさん三重
問合せ:ランチェスター経営三重(0593-98-0123)
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